非上場株式の相続税評価額を効果的に引き下げるためには、資産構成の見直しや収益不動産の活用など、複数の選択肢があります。現金や有価証券を多く保有している場合、評価額が高くなりがちですが、不動産などの評価額が低い資産に組み替えることで評価額を下げることが可能です。また、株式の分割や持株会社の設立などの手法も有効です。本記事では、これらの具体的な手法を解説し、経営者が最適な選択肢を選ぶための実践的なアドバイスを提供します。
非上場株式の相続税評価額が高くなる理由とは?
非上場株式の相続税評価額が高くなる理由の一つは、会社が保有している資産の種類です。現金や有価証券などの流動性の高い資産を多く保有している場合、それらの資産は評価額が高く見積もられます。このため、会社の純資産価額が大きくなり、その結果、非上場株式の相続税評価額が高くなる傾向があります。特に、成長企業や資産を多く保有している企業では、相続税評価が非常に高くなる可能性があります。
また、利益が安定している企業ほど株式の評価が上がる仕組みになっています。類似業種比準方式という評価方法では、企業の収益力や利益率が反映されるため、業績が好調な企業ほど株式の評価額が上昇します。これは、企業の収益力が株主にとっての利益に直結するため、評価額も高くなるという理論に基づいています。そのため、企業が利益を出し続けているほど、相続時に高い評価額が付けられるリスクが高まります。
さらに、非上場株式は市場で取引されていないため、流動性が低いにもかかわらず、税務上の評価は実際の売却価格よりも高くなるケースがあります。このような高い評価額は、相続税の負担を重くする要因となります。そのため、経営者は相続税対策として、早い段階から評価額を抑えるための資産構成の見直しや、評価を下げるための具体的な手法を講じることが重要です。
資産構成の見直しによる評価額の引き下げ方
非上場株式の相続税評価額を引き下げるための効果的な方法の一つが、資産構成の見直しです。企業が保有する資産の中で、現金や有価証券などの流動性の高い資産は評価額が高くなりがちです。これに対して、不動産や設備などの固定資産は、税務上の評価額が比較的低く設定されるため、資産を固定資産に組み替えることで、企業全体の純資産価額を引き下げることが可能です。特に、収益不動産を活用することで、低い評価額を維持しつつ、賃貸収入による安定したキャッシュフローを確保することができます。
たとえば、企業が多額の現金を保有している場合、その一部を収益不動産に投資することで、評価額を抑えられます。現金は評価額がそのまま反映されるため、相続税評価が高くなりますが、不動産は購入時の評価額が抑えられ、さらに減価償却を通じて年々評価額が低くなる特徴があります。こうした組み替えを行うことで、評価額の抑制と同時に資産の多様化を図ることができ、リスク分散の効果も期待できます。
ただし、資産構成の見直しを行う際には、慎重な計画が必要です。不動産の流動性は低いため、すぐに現金化することが難しい場合があり、また、管理や維持費も発生します。さらに、不動産の選定が適切でなければ、期待した収益が得られない可能性もあります。そのため、現地調査や市場分析を行い、慎重に物件を選ぶことが重要です。こうした点に留意しながら資産構成を見直すことで、評価額を引き下げつつ、安定した資産運用を実現することが可能です。
収益不動産を活用した相続税対策の具体例
収益不動産を活用した相続税対策の具体例として、ある経営者が自社株評価額を下げるために行った資産の組み替えが挙げられます。この経営者は、会社が保有する現金や有価証券の比率が高く、そのために自社株の相続税評価額が高くなっていました。そこで、現金の一部を収益不動産に投資することで、評価額を抑えつつ、安定した賃貸収入を得るという戦略を採用しました。不動産は現金に比べて評価額が低く設定されており、結果として会社全体の純資産価額を引き下げることに成功しました。
例えば、神奈川県内の賃貸アパートを購入したケースでは、初期の評価額は現金よりも低いため、資産全体の評価額を抑えることができました。また、このアパートは定期的に賃貸収入を生むため、現金流出を防ぎながら収益を上げることが可能となりました。さらに、この不動産は減価償却の対象となるため、年々その評価額を下げることができ、長期的な相続税対策としても効果を発揮しました。こうした組み替えによって、経営者は自社株評価を大幅に引き下げ、相続時の税負担を大幅に軽減できました。
ただし、収益不動産の選定にはリスクも伴います。立地や物件の管理状況によっては、期待した収益が得られない場合もあり、物件の選定には慎重さが求められます。市場動向や賃貸需要を見極めたうえで、不動産投資を行うことが重要です。このように、収益不動産を活用することで、短期的な評価額の抑制と長期的な収益確保を同時に実現することが可能です。
株式の分割や持株会社設立による評価額の調整
株式の分割や持株会社の設立は、相続税対策として自社株評価額を調整する効果的な方法です。まず、株式の分割についてですが、これは株式の数を増やすことで、1株あたりの評価額を引き下げる手法です。例えば、1株あたりの評価額が高い場合、その株式を分割して株式数を増やすことで、1株あたりの評価額を下げ、相続税の負担を軽減することができます。株式を小分けにすることで、少額の相続税がかかる複数の株式として評価されるため、全体としての税負担が軽減されるのです。
次に、持株会社を設立する方法です。持株会社を設立することで、株式を分散させ、親会社と子会社の2つの構造を作り出します。この方法では、事業会社の株式を持株会社に移管し、事業会社自体の株式評価額を低減させることが可能です。さらに、持株会社を通じて株式を管理することで、経営権の分散や株式の相続をスムーズに行うことができます。これにより、相続税負担を軽減しつつ、会社の経営権を安定させることができます。
ただし、株式分割や持株会社設立には慎重な計画が必要です。株式分割を行うと、株主数が増えるため管理が煩雑になる可能性があります。また、持株会社を設立する際には、複数の法的手続きが必要であり、設立後の税務面での対応も慎重に行わなければなりません。これらの方法を効果的に活用するには、専門家のアドバイスを受けながら、計画的に進めることが重要です。適切な手続きを行うことで、自社株評価額の引き下げと相続税対策を効率的に進めることができます。
非上場株式の評価額を下げる際の注意点とリスク管理
非上場株式の評価額を下げる際には、いくつかの注意点とリスク管理が重要です。まず、株式評価額を下げるために資産の組み替えや株式分割、持株会社の設立などの対策を講じる場合、それぞれの方法には法的な手続きや税務上の要件が伴います。適切な計画がないまま進めると、後々の税務調査で問題が発覚する可能性があり、追加の税金が課されるリスクも考えられます。特に、株式評価を意図的に引き下げようとした場合には、税務当局から不自然な取引として注目されることがあるため、慎重に進める必要があります。
また、資産の組み替えを行う場合には、不動産などの固定資産を導入することで現金の流動性が下がり、企業運営に支障が出る可能性があります。不動産は流動性が低いため、急な資金需要に対応することが難しくなる場合もあります。さらに、不動産市場の変動によって物件の価値が大幅に下がるリスクもあり、資産の組み替えは慎重に行うべきです。リスクを分散させるためには、収益性やリスクをよく分析し、慎重に投資を行うことが求められます。
最後に、持株会社の設立や株式分割を行う際にも、経営権の分散や管理の煩雑さが課題となります。株式を分割すると株主数が増え、経営権が分散されることで、経営の安定性が失われるリスクがあります。また、持株会社を設立すると、事業会社と持株会社の両方で管理コストがかかり、複雑な構造になるため、十分な管理体制が必要です。これらのリスクを考慮し、税務面だけでなく、経営面や資金面での影響も踏まえたうえで、自社株評価額を下げる戦略を実施することが大切です。
まとめ
非上場株式の評価額を下げるためには、資産の組み替えや株式分割、持株会社の設立などが効果的です。資産の組み替えでは、現金や有価証券を評価額の低い収益不動産に変えることで、企業の純資産価額を抑え、自社株評価額を下げることができます。また、株式の分割により1株あたりの評価額を引き下げたり、持株会社を設立して経営権の安定を図りながら評価額を調整する方法も有効です。ただし、これらの手法には法的手続きや税務リスクが伴うため、慎重な計画と専門家の助言が必要です。さらに、不動産の流動性や経営権の分散などのリスクも考慮し、総合的なリスク管理が求められます。